子どもは元気に遊び、時には泣いたりと様々な経験をして成長していきます。しかし、夜鳴きが酷すぎる・キーキー声をあげる・噛み付く・風邪を引きやすい等のあまり見慣れない症状が続くと親としては心配になるかと思います。
また、夜泣きが酷い場合には睡眠時間が充分に確保できないこともあり、両親の体調にも関わってきてしまいます。また、病院に行っても原因が分からないと言われた方もいるかもしれません。
そんなときに、お子様にも出来る鍼治療があったら治療の選択肢が増えるかと思います。今日は子ども向けの鍼治療『小児鍼(はり)』について分かりやすく解説したいと思います。
一般に使われている鍼灸治療の鍼の太さが0.16ミリで髪の毛程の太さとされています。しかし、子どもの皮膚はとても敏感であり、その太さであっても直接刺してしまうと刺激が強すぎる場合があります。そこで小児鍼(はり)で使われる鍼は、基本的には刺さない鍼を使用しています。
症状によっては、少しチクっとするスタンプの様な鍼を触れさせる事もありますが、ほとんど痛みを感じることはないです。
子どもの体や内臓を、東洋医学的にどう考えているか説明します。東洋医学的に言うと子どもは『陽の気の塊』と言われます。東洋医学は基本的に『陰と陽』、つまり光と影で物事を考えます。
子どもは、陰と陽で分けた時に陽に分類され、尚且つ陽の気を沢山持って生まれてくると言われています。子どもはもともと体温が高いうえに、熱が上がりやすく、高温になることが多いのですが、これも基本の体質が「陽」であるからです。大人の場合では、高熱になると悪寒がするものですが、子どもの場合は悪寒は長続きせず、すぐに手足が熱くなり、布団をはねのけます。「陽」が高じて熱が広がっていると考えられます。
また、東洋医学では成長の過程で必要になる気を『先天の精』と『後天の精』の二つに分類します。『先天の精』とは先天的に親から受け継いだエネルギーを意味しています。『後天の精』とは生まれてから口にしたもので作られたエネルギーと考えられています。そのエネルギーが不足してしまうと、体に様々な不調が出てきてしまうという考え方が東洋医学ではあります。
では『先天の精』と『後天の精』を生成、貯蔵、輸送する臓器はどこになるのか?それは『腎臓』と考えられています。東洋医学において、腎臓は人体の生命活動を維持する基本的な栄養物質-すなわち「精」-を貯蔵し、五藏六府に供給することで、健全な働きを維持している臓器だと考えられています。乳幼児(胎児も含め)では、発育などにも影響するとも言われています。腎の気が不足すると、先天性の発育不良、早老化現象の原因にも繋がるなどとも言われています。
東洋医学では、からだの異常を「気・血・津液」の乱れとしてとらえます。気は生まれながらのパワーを指すこともありますが、一般的には精神的、神経的、ホルモンに関連しており、血は血、津液は血液以外の体液全般の機能だと考えられています。「気」の異常としては、落ち着きのない子や心身症にみられる気滞(気の滞り)など、ストレスの為に精神的なエネルギーが低下した気うつ、虚弱児にみられる場合があります。「津液」の異常も子どもには多く、喘息やおう吐、下痢などには水毒(水滞ともいいますが)が関係していると考えられています。水毒とは、体内の水分の流れが滞ってしまい、尿などが過敏になったり、のどが異様に渇きやすかったりする症状です。一方、思春期前の子どもの場合は、「血」の異常はあまり見られません。東洋医学では子どもの体の異常を上記のような考え方を用いて治療を行います。
小児鍼(はり)の適応となる疾患と適応年齢について説明します。小児鍼(はり)で改善が見られる症状は下記です。
などの症状に効果的だと言われています。しかし、効果の現れ方は個人差があるので誰もがすぐに改善というわけではないです。継続的に治療を続けて体質をしっかりと改善していくことが重要になってきます。
小児鍼(はり)で言われる『疳の虫(かんのむし)』についても説明します。疳の虫とは、特に乳幼児期に多い精神的ストレスの事を言います。キーキー声、物を投げつける、夜中によく泣き叫ぶ、驚いて飛び起きる、食欲不振、下痢、乳吐きなどが主な症状です。このような状態を放置したり、過度にしかりすぎると、さらに感情的な障害としてひきつけ・チック症・夜尿症などさまざまな状態に発展してしまう事があります。
下記に書いたような症状が見られる場合は疳の虫の場合が高いと考えられています。
お家で行う場合には、私たち鍼灸師が使うような小児鍼(はり)の鍼を使う事はできません。鉄(銀製もしくはステンレス)の普通のスプーンを使用して行います。スプーンの裏側(丸みがある方)を使って皮膚を軽く擦っていきます。始める前にスプーンが冷たすぎないかを確認する事を忘れないことが重要です。
また、擦る場所は、背骨の上をまずは優しくゆっくり擦っていきます。その後、背骨のラインに沿って背中全体を優しく擦ってあげて、空いている手で背中が冷えないように暖めながら進めていきます。子どもが安心するように、歌を歌いながら行うのもとても効果的です。お家で行う際は、鍼灸師の先生にどこを重点的に行えばいいか事前に相談をしてから行うようにしましょう。
小児鍼(はり)にもやらないほうが良い時があります。目的により施術は様々ですが、多かれ少なかれ、体に刺激を入れることで治療をするので、刺激を入れないほうが良い時にあえて治療をする必要はありません。過度の発熱、脱水症状時、急性腹症・急性脳疾患・脊髄疾患・骨折には不適応です。必ず専門家に確認してから行いましょう。
小児鍼(はり)という言葉を始めて聞いたという方もいるかもしれません。しかし、古くから行われていた治療方法であり現在まで受け継がれている伝統的な治療方法です。鍼を刺すだけが治療ではありません。安心して受けられる治療法を見つけていきたいものです。病院以外での治療方法も含めて、選択肢が増えればと思います。